Vol. 0161
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国語力と理系脳を鍛え、グローバル人材を育てる学習塾ペガサス府中夢教室・塾長の仲山です。
昨日(11月19日土曜日)、『聖の青春』が公開されました。
府中ではやっていなかったので、立川のシネマワンで見てきました。
静かな映画でした。
でも、静かだからこそ、瞬間湯沸かし器が沸騰するような、聖の爆発するシーンが圧倒的インパクトを持っていました。
それにも増して、羽生善治名人との対局場面がすごい。
無言の緊迫した戦いの中に聖の生きてきた場面が重なるクライマックス。
見ているだけで、全身の肌がザワザワと音を立てるような、そんなシーンでした。
行って良かったです。
映画も良かったですが、原作も秀逸です。
『聖の青春』の原作を読み返しながら、
これはやはり『子育ての本』だと確信しました。
子どもが夢中になることに親が惜しみなく支援する。この構図は八王子の羽生家と非常によく似ている。将来何かのためになるとか芸を身に付けるとかいうのではなくて、我が子が熱中するから親もできる限りの応援をする、そこにあるのはただそれだけの単純で明快な図式なのである。大崎善生著「聖の青春」角川文庫 より
『聖の青春』は、親の愛情で満ちています。
村山聖の親(伸一とトミコ)は、普通の親です。
間違っても、「名人棋士の育て方 ~こうやれば天才は育つ~」などという子育て本を書く親ではないでしょう。
逆に、親としては数々の失敗を重ねています。
まずは、聖が3歳の時、熱を出す聖を町のヤブ医者にあずけ続けたおかげで腎ネフローゼを発病させてしまう。
腎ネフローゼが無ければ将棋との出会いも無かったと言えますが、これは聖に重い十字架を背負わせることになりました。
次に、聖から将棋の本をせがまれた時、まともな親なら小学生でも読めるような挿絵がいっぱいあってカラフルな小学生用の本を買うでしょう。
しかし、トミコが買ったのは小学一年生には読めるはずもない漢字だらけの難しい将棋専門書。
ところが、そんな専門書を聖は「何度も読み返せばわかるんじゃ(広島弁)」と、面白がって結局読破してしまう。
さらに、伸一は、「プロになりたい」という聖の夢を引き留めようと親戚を呼んで親族会議を行う。
しかし、聖の「いま行くしかないんじゃ」という魂の叫びに親族一同感服し、伸一は逆に親戚一同から説得されてしまう。
このような親の失敗(「失敗」というより「至らなさ」という言葉の方が当たっているかも)を重ねながらでも、聖は成長し、グングンと棋士としての才能を開花させていくのです。
『聖の青春』は子育て本ではありませんが、私のように子育てを常に考えている者にとっては珠玉の子育て本です。
伸一とトミコが普通の親だったからこそ、病気の我が子を思う苦しみや悩み、強い想いがストレートにそのまま伝わってきます。
伸一とトミコが聖の親だったからこそ、聖は幸せの真っ只中で死んでいくことが出来ました。
これ以上の親の仕事があるでしょうか?
伸一とトミコを見ていると、子どもが生きてくれているだけで親は幸せなんだと思い出させてくれます。
子どもに感謝する気持ち、これが無くて子育ては成り立たない、子どもを幸せにすることは出来ない。
我が子を東大に合格させました的なストーリーや子育てテクニックの本ももちろん大切ですが、
まずは、子育ての基本は、かけがえのない存在である我が子の真の姿をしっかりとみつめる事。
そんな事を、『聖の青春』の伸一とトミコから学びました。
残念ながら、映画では聖の少年時代はあまり描かれていませんが、原作の前半に丁寧に書かれています。いつか森義隆監督に「少年村山聖」も撮ってもらいたいなと思います。
また、子育て以外にも、師匠の森信雄七段が聖を思う気持ちにシビレました。塾で普段から生徒たちを教える立場にある私にとって、常に立ち戻るべき原点です。これについてはまた書きたいと思います。
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